お侍様 小劇場
 extra 〜寵猫抄より

    “陽だまり・あったかvv”


てぇびの中からも、お外でも、
なんかし皆んなして
“おめでとーございます”ばっかゆってたけど。
とーきょのお家に帰って来たらば、
そえも何か おあった(終わった)みたいで。
寒さむの朝も来ゆけど、ちょっとだけ。
すぐにもお窓から
暖ったかいのが いっぱいぱいになって、あのね?
クロたんといっしょに、
けーとのまるまる追っかけたりして、
ころころりんてして いっぱいぱい遊しょぶの〜vv



    ◇◇


島田せんせえのご自宅は、
リビングの大窓が南向きなため、
冬将軍の到来で底冷えに襲われていようとも、
陽さえ照り出せば、
午前中から陽の入りの頃まで
ずっとほかほかと暖かい。
日向は陽に塗り潰されての、
くるみ色に暖められてるフローリングにて、

 「にゃっ?」
 「まぁお・にぃvv」

ぴょこたんと跳ねる自分の陰を、
興味津々 じ〜〜と見据えてから、
待て待て待ってと追っかけては、
無邪気に駆け回る仔猫さんたちで。
一丁前に前脚を床へ寝かせての伏せの姿勢は、
虎やピューマの狩りの姿を彷彿とさせるが。
視野の隅っこでひらんと揺れた、
自分のお尻尾の陰に誘われて。
がばちょと起き上がると、
お尻尾がますます逃げるとも気づかず、
負けるもんかとの勢いで。
小さな前足 揃えての、
床の陰を目がけ、たぁと飛びつくのが……

 「〜〜〜〜〜〜〜。/////////」
 「判った、判った。」

 だって勘兵衛様、ほら、
 飛び上がる一瞬前にバネをためて、
 柔らかい体を弓なりにして ぴょいって、
 何とも言えぬ間の善さで
 全部の足が浮くほど跳ね上がるのが、
 凄んごい一丁前で……と。

そうと言いたいらしいなと思わせる、
切なる悶えようを胸に秘め。
そのたわみかかった口許をきれいな拳で押さえつつ、
傍においでの御主様の懐ろ、
見もせずに ぱふぱふぱふぱふ〜〜〜っと連打する、
金髪の敏腕秘書殿だったりするのも相変わらず。
見もしないでというのは、
わざわざ確かめる必要もないほど
すぐの間近に寄り添い合ってるからでもあるが。
そうだと気づくのは、実は随分と後になってから。
そりゃあ愛らしい仔猫たちの様子から、
いっときたりとも目が離せないから…が先に来る辺りが、

 “…………う〜ん。”

後回しにされてるのはちょっと妬けるかもと、
勘兵衛様を 内心で苦笑させていたりもするのだが。
(笑)

 「にゃっ、みゃうっ。」
 「にぃに、みゅうvv」

いつもだったら みんなで陣取っているコタツのお布団。
いいお日和だから午前中だけ干しましょうねと、
てきぱきと剥ぎ取られたのへも。
これが昨年だったなら、
連れてかないでとの想いから、
いちいち“みゃうまう”と切なく鳴きながら、
七郎次おっ母様の足元へまとわりついちゃあ、
断固阻止の構えで抵抗しもしたものだったけれど。
(そして、
 結構なダメージをおっ母様へも与えていたのだけれど。)
今年は、小さな弟分という相棒ができたせいか、
ただただ甘えん坊だった久蔵ちゃんも、

 《 埃を落としてフカフカになるんだお?》

だから、我慢しようね?…なんてこと
言い聞かせてでもいるものか。
時々 窓辺まで駆けてっては、
物干しの方を背伸びして見やるクロちゃんなのへ。
よちよちと後を追ってゆき、
ねえねえと小さなお手々で相手のお背を撫でてやりつつ、
みゅうみゅう話しかけていたりもし。

 「仔猫同士の姿で見ても可愛らしいですが、」

甘いキャラメル色のふかふかな毛並みした、
メインクーンの仔という姿の
久蔵とクロちゃんという組み合わせで見るもよし。
はたまた、
ふんわりした金の綿毛の陰に玻璃玉のような双眸を潤ませている、
頬もお手々もふくふくと柔らかそうな、ちんまりした幼子が。
天使のような愛くるしい風貌で、
そちらさんもまだまだ赤ちゃんの域を抜けない、
小さな小さな仔猫へと、
どこか危なっかしい、覚束無い手を伸べる様といったら。

 “かっ、かわいい〜〜〜っ。//////////”

あああ、女子高生がうらやましい。
こういう“かわいいvv”を見て、
素直に感じ入ったまま叫んでも見苦しくないのだもの。
お顔がほころんでも、胸元押さえて身もだえしても、
みっともなくはないのだものと。
でもでも、自分はもういい歳をした男だし…と、
そんな思惑という制御がついつい掛かるもんだから、

 「〜〜〜〜〜〜〜。////////」
 「そうさな。
  あれは布団と一緒に運んでった
  枕からこぼれたダウンだな。」

広々したリビングの、どこに引っ掛かっていたものか。
ふわんひらんと落ちて来た、小さな羽に気がついて、

 「にゃっ。」
 「みゃっ。」

捕ゅかまえよぉよ、うん、捕ゅかまえりゅの…とでも、
一丁前に示し合わせているものか。
まだまだ届きもしない上空にある内から、
えいっと、ていっと、
とたたんっと床を蹴っては飛び上がりして、
寸の足らないお手々で空を掻き、
何とか捕まえようとするのがまた可愛い。
同じ位置目がけて飛び上がるものだから、
ぽそんとぶつかり合っての、絡まり合ってしまいもし。
それがまた、何とも無邪気で愛らしく。
そして、

 「か、勘兵衛様。」
 「息が切れるほども声を押さえ込まんでも。」

拳にしていた手で、
今度はすがりつくよに
こちらへと掴まって来た彼だったので。
ああそこまで進んだかと、実はそれへも慣れたもの。
軽い酸素欠乏になったらしく、
目眩いを起こしている伴侶殿の肢体を、
ぽそりと懐ろへ受け止めて。
しなやかな腕や胸元の感触、陽に温められた髪からの甘い香に、
微妙に味な気分を誘われつつも、

 「ほれ、しっかりせぬか。」

そおと回した腕にて懐ろ深くへと掻い込んで、
武骨ながらも大きく頼もしい手で背中を撫でてやり。
ゆっくりゆっくり深呼吸をなと、
愛しい連れ合いさんを励まして差し上げ。
こういう流れになることも稀にあるものだから、

 《 それでのこと、
  そのように萌えるの、
  大人げないとまでの強い窘めをせぬ、主様なのかの?》

 「………あのな。」

小さな黒猫さんが、
日頃、おっ母様へは絶対に見せぬような眇めた目つきになって、
本来の主人、蓬髪の壮年殿へとこそり囁いたのだが。

 「みゃ?」

小さな久蔵ちゃんにも意味が判ったのは、
宵が訪のい、青年の姿へと戻って、
供連れの兵庫殿へ訊いてからだったというのがまた、
クロさんを苦笑させた顛末だったそうでございます。






   〜Fine〜  2012.01.12.


  *この冬一番の寒さだったそうですね。
   このフレーズ、これからもたびたび聞くことになるのかなぁ。
   皆様もご自愛くださいね。
   でもでも、風さえなけりゃあ、
   陽だまりでは暖かいほどだったので。
   ウチでも小姫ちゃんが
   ちょっと遊んじゃあ
   眠たそうにお舟をこいでおりましたvv


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